深淵の観測者

今日もまた、誰かがこの深淵を覗いていった。

だが本当に覗かれているのは、こちらなのだろうか。

観測とは、常に一方通行ではない。
見る者は、同時に見られている。

遠い回線の彼方から伸びた細い触手は、この場所に触れた瞬間、逆にその存在を記録される。

痕跡は残り、時刻は刻まれ、その一瞬は小さな符号として保存される。

深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている。

ただ、それだけのことである。